カレー屋の声

今日も例のごとくソクーロフ祭を観覧するため、渋谷へと赴いたワタクシです。レポートは後回しにするとして、映画鑑賞後、夕飯を食べにお店へ立ち寄った時のことを先にお話しましょう。
すっかり通いなれた道を駅へと向かう途中、この前寄ったラーメン屋にほど近いところにあるカレー屋が目に留まりました。外の立て看板に掲げられているメニューをじぃーっと見ながら、
「あれぇ。カレー屋なのに、カレーがねぇなあ」
疑問の感嘆詞が私の頭の中を駆け巡り、カレー食いたいけどカレーが無かったら嫌だなぁ。と思いながら、しばらくお店の前で固まっていました。すると、中から店のご主人が現れ、
「夜はカレーやってないんですよね!定食メニューになっちゃうんですよ!」
と、随分気さくに話しかけてくるではありませんか。おわっ!カレー屋なのに堂々と「カレーありません」と宣言するとは、なんと潔い店だと(いや変わった店だと)、少々いぶかしみながらも、しかしやはり腹が減ったのでどうしたものかと思案していました。
そうしたらご主人。
「でも“牛筋カレー”なら夜でもやってるんです。よろしかったらいかがですか!」
なんだ、あるじゃん!(笑)こうなったらカレーなら何でも良いですよ。もはや“カレー腹”となってしまった私の欲求を満たすのは、やはりカレー意外に考えられないわけですから!
「あ、じゃあお願いします」
と店内へ入りました。ご主人の話では、三日間煮込んでトロトロになった筋が絶品だと言うのですが、自分で言うか?と思ってしまうその自信の表れが、まあ、別に憎めないところでもあったのですが。
「じゃあ、頂きます」
ひと口ほお張ると、確かに牛筋がトロトロ。クセのない味で、肉の食感が食べ進むほどに旨味を感じさせてくれて、牛筋を救い上げるスプーンの一杯が嬉しいひと口となるのです。ご飯の上にはパウダー状になったチーズが振りかけられ、ほのかに風味を漂わせて、これまた味に深みを与えるスパイスとなっておりました。
人懐っこいご主人といろいろと話ながら、「やっぱ変な店だわぁ」と思いながら(笑)、なかなかに満足を得られた一皿を完食しました。お代を払おうとサイフを見たら1万円札しかない。
「すいません。これで」
と言うと、
「あ〜、細かいのは、ないんですよね!?」
どうやらお店もつり銭が不足している状況だったようで。それじゃあ、いまから小銭作ってくるんで、と言って店を飛び出すご主人(笑)客一人店内に取り残して、近くのコンビニへと駆け込むご主人がおりました。
渋谷なのに、すげぇアバウトな店だなぁと思いながらも、こんなちょっと下町風味のフレキシブルさが楽しいひとときでした。いやぁもちろん、その間に食い逃げなんてしませんよ!ちゃんとお代を払って、ごちそうさん!と気持ちよく家路に着くことが出来ました。良かった良かった。

@ちぇっそ@