日露戦争勝利の秘史 敵中横断三百里

対ロシア戦線。もはや兵員も砲弾も限界を迎えた日本軍は、ロシア軍に向けて総力戦を挑むことになる。しかし敵の中枢は「鉄嶺」か、それとも「奉天」なのか?全総力を結集して総攻撃を仕掛けねば、我が日本軍に明日はない!そこで軍部は斥候部隊を組織し、敵地視察を命じる。日本の勝利は斥候部隊の報告如何に掛かっている。果たして、彼らは無事生きて帰ることが出来るのか!
1957年製作の戦争映画スペクタクル。脚本には黒澤明が関わっています。
この大事な任務の命を受けたのは建川中尉。彼は5人の兵士を引き連れ、露軍の真っ只中へと潜入するのです。道中では、馬賊を従えゲリラ作戦を決行する日本軍の将校に手厚くもてなされたり、または敵のコサック軍に出くわし逃走する場面などが映し出されます。
このように戦争を「全体的」に捉えたものではなく、小さな「班(1班は兵士5〜6人からなる)」の視点で進行してゆく映画がこの日本にもあったことが新鮮。個人的なことを言わせてもらえば、私はこう言う「日本の戦争映画」こそ見たかった!
先ず映像がいいですね。ロシア産の戦争映画はたくさん観てますが、それと見劣りしないリアルさ。雪に湿った制服の質感などが、画面上に上手く映し出されています。北海道での撮影と言うロケーションも最高。荒涼とした雪原の様子が、実にうすら寒い印象を与えますね。
日本を勝利に導いた英雄の物語であり、戦争を戦った若者たちによる青春の物語でもあります。当然のことながらプロパガンダ的な要素が色濃い。とは言え戦後の製作なので、復興を目の前にした日本国民を鼓舞する意味合いが強いでしょうか。
悲劇や悲壮感と言ったものは少なめで、ユーモアがあり祖国のためを思って戦う兵士の友情が前面に押し出されています。
もし今、これと同様にあっけらかんとした感じでもって映画を製作するとなったら、間違いなくアジア諸国から批判されるでしょう(笑)でもやり方はあると思うんです。例えばロシア産の「コーカサスの虜」のように。
もっともロシアに関して言えば、現在進行形で戦争が続行中ですから、戦争と言ったものをより実感し易いという点はあります。
しかし日本に関して言えば、戦争と言うものが若者達からかけ離れすぎてしまっている。形式的に「戦争は悲惨だ」と言われても、やはりどこか遠い世界のお話にしか聞こえない。
だったら彼らにもわかるように、等身大の戦争の姿を上手く伝えることが出来ないものか。もちろんこの作品がそうだとは言いませんが、戦争の中にはこういった一面もあることを伝えてはいるかと思います。
作品的にはやや無理な部分がなくもないですが、1957当時、同時代のロシア映画の中にも、同様の強引さを兼ね備えた作品も多いので、本作に関して言えば個人的には許容範囲でした(あれが当時の演出の限界だったと思うことにしよう)。
大映が総力を挙げて製作したスペクタクルと言った意味では画期的だったのでしょう。それに相応しい娯楽を得られたと言う点で、私は結構楽しみました。
日本はね、もう「カッコいい戦争映画」を作っちゃダメなんですかね?ナショナリズムの問題はさて置き、この「敵中横断三百里」みたいなヤツはやっぱり燃えるんですよ!
なんだか悔しいなぁ。アメリカばかりがプロパガンダ映画が許されるんじゃあ。あんなんだから、未だにデカイ面してイラクとかに介入してくんだよって話(極論か)

@ちぇっそ@